起業複業

喫茶室ルノアール|宣伝しないけど貫かれた経営理念

東京を中心に店舗展開する喫茶室ルノアール。関東圏で仕事をしている人なら一度は入ったことがあるのではないでしょうか?都内のメインターミナルにはほぼ店舗があったりします。そんなルノアールを昔使っていた頃をふと思い出したら気づくことがありました。あまり話題に上ることはありませんが、特筆すべきビジネスモデルがあると感じます。

独立起業して3年目までは常連として利用していました。その頃は個別相談がビジネスの柱。都内でゆっくり話ができ、かつ料金がそこそこの場所を見つけるのに苦労しました。スタバ、タリーズあたりは混んでいてゆっくり話せる雰囲気ではありません。ドトール、ベローチェもせせこましい。ホテルのカフェはゆっくり話せますが単価が高い。いろいろ試した結果、ルノアールに行き当たりました。

まず席につくと熱いおしぼりと水を持ってきます。熱いおしぼりがありがたい。これでゆっくりできる気分になります。少し以前は普通に見かけたおしぼりも今はほとんどなくなりました。無機質なペーパーお手拭きではその代わりは果たせません。

一番驚くのが接客。街中にあるカフェや喫茶店であれば当たり前のように回転率重視。飲んだら出ていって的な空気感があります。ルノアールは真逆。頼んだ飲み物が終わると「お茶はいかがですか?ごゆっくりどうぞ・・・」と言って熱いお茶を持ってきてくれます。

そしてしばらくすると「お茶の入れ替えです。ごゆっくりどうぞ・・・」と言って新しいお茶を持ってきます。追い返そうどころかいつまでも居てください的な感じなのです。その頃、相談ピーク時の週末には朝9時から夜9時くらいまで12時間近く居たこともあります。

顧客層も自然に絞り込みがされています。店内に明るいイメージはありません。来ている人は個別商談らしき人、一人でパソコンをパチパチ打って作業をしているような人ばかり。周囲がそんな人だからより入りやすくなります。店員も不必要に歩き回らないから面倒なことはありません。そんな雰囲気が店に来てほしい人を呼んでいる流れができています。

一番すごいと思うことは、こうしたことを全く宣伝していないこと。ここからは想像の域になりますが、基本姿勢を守り、地道にコツコツ実践し続けてきていることに徹しているように見えます。

普通だと「ゆっくりしていただくことを第一に考えたルノアール、決して追い返したりしません」といったキャッチコピーを作って売り出していきがち。そんなことは一切せず、ひたすら店としての姿勢を貫いている感じがします。

ミヤマ珈琲という郊外型の店舗チェーンも展開しています。横の席と一定の幅があり、座りやすい椅子と電源完備で一人作業しやすい席レイアウト。ここでも「追い返さない」接客姿勢は変わりません。考え事がしやすい空間が心地良くて、自宅作業のときはちょくちょく利用していました。

「一杯のコーヒーを通して、お客様にくつろぎとやすらぎを感じていただけるホスピタリティサービスを提供することで社会貢献する」経営理念がホームページに記載されています。よくある文言だがそれが実践できている店が実際にあるのがすばらしい。

喫茶室ルノアール。50年以上の長きに渡って経営しつづけている理由。一度お店に行って研究してみるもの面白いのでは?

無言で貫く実践の価値