講演で奈良川西町商工会さんへ行きました。1時間ほど前に着いたので事務局長と雑談をしていました。いろいろと話す中、町の特産品の「貝ボタン」の話題になりました。貝ボタンとは文字通り、貝でつくったボタンのことです。
もともとボタンの素材は貝がはじまりとのこと。大量生産の波に押され、プラスティック製のものなどが主流になりました。でも、環境にやさしく手作りで上品でおしゃれなところから本物志向の人には愛されています。そんな貝ボタンを日本で作っているのは川西町だけという希少価値なのです。
明治時代、ドイツ人技師の指導で神戸で製造が始まりました。大阪を経て和歌山、奈良へと伝わりました。当時の農家は農業と養蚕がメインの仕事。それがない暇なときに何かできないかというところへ貝ボタンの話が来ました。初期投資が掛からず、手軽に始められるということで広まりました。農家の副業です。
この話を聴いたとき、まさに「複業」の取っ掛かりに近いなあと感じました。本業の傍らで、自分がやりたいシゴトを少しずつ育てていくのが複業。100年以上前に新しい働き方の取り組みがあったことに感動しました。
こんな特産品を復活したいとの思いで商工会では貝ボタンをネットで取り上げるを考えました。「そんなのやっても儲からんよ」現業でやっている人は言いました。みんなこれまで問屋さんと商売することしか頭にありません。直販しませんか?と持ち掛けても「そんなの面倒くさい」で一蹴されたそうです。
発信していると、「貝でメガネの鼻パッドは作れませんか?」など異業種からの問い合わせが入ってくるようになりました。現場でやってきた人だけで考えても新しい発想は出にくいもの。まったくの素人を入れることで新分野を見出した好事例です。
コツコツ10年かけて形になって来ました。課題は次世代の担い手がいないことです。同じ悩みを抱えている人はたくさんいるでしょう。古き良きものに新しい切り口でスポットライトをあてる。そんなシゴトをしたい思いにかられました。
温故知新でシゴトをつくろう